閉校にあたって

 

 小泉海岸から吹き上げる浜風は未だ冷たさが残っておりますが,その中にも,草木が芽吹く春の足音が聞こえてきそうな季節となりました。例年であれば,何よりも春の訪れが喜ばしいところですが,今年に限っては,できるだけ春がゆっくり訪れるよう願っておりました。しかしながら,無情にも時は過ぎ,ここに小泉小学校は閉校を迎えることとなりました。

 2792名。先日,学び舎を巣立った6名を含め,これまでの小泉小学校の卒業生の人数です。加えて在校生が30名,そして,一時的にではあれ小泉小学校で学んだ方々を含めると,3000名にのぼるでしょう。一口に3000名と言ってしまうことがはばかられるほど,そのお一人お一人に,それぞれ何十,何百もの思い出があり,まさに数え切れないほどの思いが今も学校のあちらこちらに佇んでいます。

 二月の末には,地域の皆様に最後の小泉小学校の様子を御覧いただこうと思い,学校公開を行いました。100名を超える方々に,今の小泉小学校の様子,児童の学習の様子を御覧いただきました。かつての同級生と顔を合わせ,懐かしさに目を細め談笑する方。子供たちによる校歌の演奏を聴き,涙する方。「新しい校舎に初めて入りました。私のときは古い校舎だったから。」と目を輝かせる方。どなたも,学校のあちらこちらに散らばった思い出を集めるように,みずみずしい子供の心に戻り,あの頃に思いをはせておられました。

 永年に渡り,皆様に愛していただいた小泉小学校ですが,社会の変化とともに少しずつ姿を変えてきました。これからの時代を,世界を相手に生きていく子供たちにとって,より多くの人と交わり,考えを交流し,よりよい考えに昇華させていく力が何よりも必要になります。そういった観点から,小泉小学校も大きく変化する時を迎えていることに御理解をいただきましたことに感謝申し上げます。

 小泉小学校には,150年の間,深く刻まれてきた歴史があります。小泉小学校とともに,子供たちの生き生きとした姿がありました。楽しく遊ぶ声がありました。学ぶ喜びがありました。長い歴史の中には,戦争も,度重なる災害もありました。大火に見舞われたこともあると聞いております。どんなときでも,そこに学校があり,地域のよりどころとして在り続けました。地域の宝物を守り,慈しみ,愛し,育んだ大人たちがいました。

 これからは小泉の子供だけでなく,津谷の子供も,馬籠の子供も「地域の子」「地域の宝」になります。どうぞ全ての「地域の子」たちをこれまで以上に守り,慈しみ,愛し,育んでいただきますよう心から,強く強くお願い申し上げます。

 結びになりますが,これまで150年の永きにわたって地域のよりどころとして在り続け,多くの人材を輩出してきた小泉小学校と,それを支えてくださった保護者,地域,職員の皆様など,関係する数多の諸先輩方に厚く御礼を申し上げ,閉校にあたっての挨拶といたします。

 

                      気仙沼市立小泉小学校

                       校 長  進藤 俊博

                 

 

 

 

                              


 

 

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